昭和53年05月30日 参議院 商工委員会

[191]
日本共産党 安武洋子
私は、竹島の問題について集中審議をさしていただきます。

最初にお伺いいたしますけれども、韓国は4月の30日に領海12海里を実施いたしまして、5月の9日から10日にかけて軍艦、警備艇、これが出てきてイカ釣り漁船に対しまして、韓国の領海侵犯だから即刻退去を命ずる、こういうことがあったということでございますが、事実は間違いございませんか。端的にお答えください。

[192]
政府委員(外務省アジア局長) 中江要介
4月30日に韓国は領海法を実施いたしまして、韓国が領海を12海里にしたということはおっしゃるとおりでございます。

竹島周辺の問題につきましては、5月の8日にソウルの韓国の外務部からわが方の韓国大使館に対しまして、口頭でわが国の漁船20数隻が前日の5月7日から竹島周辺で操業していることについて、これが領海侵犯であるといって抗議をしてまいるとともに、それらの漁船の退去を要求してまいりました。

これに対しまして、わが国の在韓大使館の公使から即刻その場で、竹島は日本固有の領土であるので韓国の言い分を認めるわけにはまいらない、韓国側に対して、韓国が抗議を申してきたことに対して抗議すると言って反駁いたしました。その間、現場では韓国の警備艇が日本漁船に対しまして、12海里の外に退去をするようにというふうに求めてまいりましたので、日本漁船は現場では不測の事態を避けるために、とりあえず12海里の外に退去いたしました。

その後いろいろ経緯がありまして、現在ではそれがもとの状況に復していると、こういうことが経緯でございます。

[193]
日本共産党 安武洋子
国会答弁で5月25日に竹島周辺の漁業問題については、園田外相は、事態は好転している、こういう御答弁でございますけれども、好転しているという中身は具体的に何なのでしょうか、お答えください。

[194]
政府委員(外務省アジア局長) 中江要介
これは、竹島周辺におけるわが国漁船の操業のあり方が、今回5月8日に申し入れを受けたような事件の起きる前の状況に復しているというふうに、これは事実の問題としてそういう情報を受けているということでございます。

[195]
日本共産党 安武洋子
では竹島周辺にわが日本漁船が入っていると、こういうことでございますか。韓国の外務省当局者は直ちに翌日に、竹島周辺にもし日本漁船が侵犯したならば韓国の法律に従い罰せられよう、こういうふうな発表をいたしておりますが、これはどういうことでございますか。

[196]
政府委員(外務省アジア局長) 中江要介
事実の問題でございますので、事実関係は所管の水産庁の方から御説明いただいた方が正確だと思いますが、要するに、この事件の起きました前の状況に復しているというそういう事実を情報として外務省は承知しているということでございます。

他方、韓国の方で竹島の12海里内に入ってきた漁船は、これは法律に従って措置するということは、これは韓国のとっておりますたてまえからいたしますとそういうことになる。それがそもそも最初、わが方に抗議を申し入れてまいりましたときの韓国側の立場であって、その立場は日本としては認めることができない。日本として認めることができない韓国の立場を韓国が言っていると、こういうふうに御理解いただければいいかと思います。



[203]
日本共産党 安武洋子
日本の漁民の方は、いま12海里の中に入れないというのが現実の問題でありませんか。地元の方たちがそうおっしゃっている。

韓国の漁船の方は日本の12海里の中に入ってきてそして漁具を荒らしたり侵犯したりしていると、こういうことに対して一体日本政府はだれが責任をお持ちなんですか。竹島の12海里の中に入ってもし事故が起こったというふうなことについては、総理、責任をお持ちになりますか。御答弁いただきます。

[204]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
竹島は非常に、先ほども申し上げたように不正常な状態にあるわけなんです。ですから、わが国の権利といたしましては、あそこで出漁できるこういうたてまえではございまするけれども、残念ながら終戦直後のごたごた以来韓国の官憲が出張ってそして事実上の支配をしておると、こういう状態です。

そういう中でどうするかというと、まあ水産庁が言うように、出ていくことはこれはもうできる、そういうことでございますが、これは法律上そうだと、こういうことであります。出ていった場合にどういう不測の事態が起こるかはこれはわかりませんから、これはその辺はよくわきまえながら行動してもらいたいという私は気持ちでございまするが、万一不測の事態が起こるというようなことになりますれば、これはわが国の政府においてこれをどういうふうに処置するかということについては責任を持たなけりゃならぬ、そういう立場にあると、こういうふうに考えております。

[205]
日本共産党 安武洋子
自分の領土の近辺に出て漁をするのに、不測の事態が起こるかもわからないけれども、それに責任が持てないというのは、大変情けない状態ではございませんか、一国の首相として。

私はここでお伺いいたしますけれども、いま竹島はどういう状態になっているのか。昨年8月31日に竹島に巡視艇が近づいて視察をされておられますけれども、そのときの状況をひとつ具体的におっしゃっていただきとうございます。

[206]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
ただいま安武先生から御質問ございました昨年8月31日に巡視艇「くずりゆう」で竹島の調査を、外務省の要請に基づきまして行いましたときの状況を御報告いたします。

竹島は東島と西島とからなっておりますが、そのうちの東島には、灯台1基、見張り所2カ所、小屋3棟、宿舎と思われるもの1棟、各種アンテナ、石碑、銘板などが主な施設としてあり、その1年前に調査したときと比べて新たに頂上に銃座が1基新設されているのが確認されました。西島には小屋2棟があり、岩はだに韓国文字が記入されていました。なお、東島には韓国の警備隊員と思われる者が13人視認されました。

以上です。

[207]
日本共産党 安武洋子
そのときに、13名のうち9名が武装していたと、こういう事実は間違いございませんね。

それから、竹島から8.5海里離れた海上で、8月31日、ファントム戦闘機であろうと推定される韓国軍用機2機が巡視艇の上空に飛来したと、こういうことも間違いございませんか。

[208]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
先生いま推定されるとおっしゃいましたが、その事実、推定される事実は間違いはございません。

[209]
日本共産党 安武洋子
こういうふうに私はグラビアを持ってまいりましたが、週刊誌の。こういうふうに韓国の国旗がちゃんとコンクリートでつくられている、そして「韓国領」というふうに書かれている、こういう事実も確認されておりますか。

[210]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
私どもは実は「くずりゆう」から見ましたときは船から見るので、御承知のとおり水面すれすれのところから視認する方法しかございません。なお、島はかなり岩壁が直立と申しますか、海岸にそびえ立っておりますので、その上の物件について船から視認することは困難でございます。

[211]
日本共産党 安武洋子
5月の19日に私どもの党の渡辺議員が竹島問題で運輸省に対しまして申し入れをさしていただきました。そのとき薗村海上保安庁長官は、韓国の軍用機が飛んできてマストすれすれに飛んだと、こういうことを明らかにされておりますが、これは事実でございますか。

[212]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
先ほども申し上げておりますように、軍用機とおぼしきものが飛んできたと。私どもはひょっとするとそうじゃないかなと思っておる事実はそのとおりでございます。私そのとおりのことを渡辺先生に申し上げました。

[213]
日本共産党 安武洋子
じゃ、またそのときに、巡視艇が竹島に200メートルから300メートルに近づいたときに、韓国の警備兵は巡視艇に対してどのような対応をしたのでしょうか。

[214]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
先生のお話は、陸上の警備隊員がわが方に向かって銃を向けたという事実をおっしゃっているのだと思いますが、そのとおりでございます。

[215]
日本共産党 安武洋子
そのほかにもまだございませんか。

[216]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
ちょっと何を、先生何のことか私わかりませんが、大体もう事情はいまのお話でほとんど出たように思います。私別に隠していること、ほかにはございません。

[217]
日本共産党 安武洋子
では、この事実を確認いたしますが、警備兵が鉄砲を向けて威嚇したと同時に信号筒を打ち上げた、こういう事実も間違いございませんか。

[218]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
そのとおりでございます。

[219]
日本共産党 安武洋子
竹島にいままで上陸して調査をなさったことはございますか。

[220]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
先ほどからもお話が出ておりますように、私どもとしても残念なことでございますが、恐らく20年代の終わりごろ以来、わが方が有効的に施政を行い得ない状態に立ち至っておりますので、上陸をして調査したということはございません。

[221]
日本共産党 安武洋子
38年の8月の6日に上陸をなさって、「島根県穏地郡五箇庄村竹島」という標柱を立てた、こういう事実はございますね。そうして43年に海上保安庁としては竹島に対する通常警備、これをやめて、年1回、周辺の調査だけに変えた、こういう事実がございますね。いかがでしょうか。

[222]
政府委員(海上保安庁長官) 薗村泰彦
ちょっといますぐのお話なものですから、私年代を正確にあれしておりませんけれども、事実先ほどからもお話が出ておりますように、有効的な施政が及ばないということになった現状に基づいて、私記憶しておりますごく最近の数年間は、年に1回ないし2回、外務省と連絡をして船を出して海上から調査するということになっております。

[223]
日本共産党 安武洋子
竹島の問題の発端といいますのは、これは昭和27年に李承晩ラインと称して、韓国が一方的に竹島を韓国の領土だとこういう主張をし始めた、ことにあると思うのです。このとき韓国は軍艦を出動させたりしております。

この当時、韓国側による日本漁船あるいは巡視艇に対しまして発砲事件があったと思うのです。これは1954年9月25日付で、外務省は同島の現況調査に派遣された日本巡視艇が同島より突然砲撃を受け損害をこうむるに至った、こういう口上書を韓国に送っておられますが、これは事実かどうかということを確認いたしとうございます。

そのほかにも、この口上書の事件以外に発砲事件があったかなかったか、このことをお答えいただきとうございます。

[224]
政府委員(外務省アジア局長) 中江要介
昭和29年の抗議の口上書の中で、海上保安庁の巡視船が銃撃されたということを抗議の中に入れていることは事実でございます。

それ以外に発砲事件はなかったかと申されますと、先ほどちょっとお触れになりました昭和28年に、つまりその口上書で抗議をしますその前にも、昭和28年に巡視に赴いた海上保安庁の巡視船が韓国艦艇により銃撃を受けるという事件がございました。銃撃発砲の事件はそれ以後聞いておりません。

[225]
日本共産党 安武洋子
総理、いまはっきりしたように、総理は先ほどから占領後のごたごたの中で云々というふうなことをおっしゃいましたけれども、アメリカが占領を解いたときに明らかにこれは竹島は日本の領土だ、こう言っているわけです。そうして総理自身も日本固有の領土であるということを明言されておられるわけです。

ここに日本は巡視艇が近づいても韓国から発砲される、こういう事件がいま御答弁にありましたように3件もあるわけなんです。こういう状態というのは、明らかに竹島が韓国の武力行使によって占領されている、こういう事態ではありませんか、いかがですか。

[226]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
おっしゃるとおり、韓国政府が竹島を実力をもって支配しておると、これはもうそのとおりでございます。

ただ、そういう状態がどうしてできたかといいますれば、占領後わが国の立場が非常に弱い立場にあった、そして李承晩ラインというようなこともある、マッカーサーラインというようなこともある、そういうようなことで、一つの非常に不幸な事件として竹島が韓国の官憲の支配すると、こういうようなところになってきちゃったわけなんです。それで今日に至っておる。

しかし、アメリカ政府が言うように、わが国は、これはもう固有の領土であるというこの立場につきましてはいささかも変わるところはないわけでありまして、これをいつの日にか正常化しなきゃならぬ、こういうことでございますが、まあそれが、じんぜん今日に至っておりまするけれども、先ほどから何回も申し上げております――竹島問題を、両国の間に合意があるわけですから、その合意の線に従って処理すると、こういう考えでございます。

[227]
日本共産党 安武洋子
総理いかにおっしゃっても、日韓条約、これを締結されたときに、私は竹島を放棄なさったというふうには思っておりません。それからもういま18年、これだけの日時がたっておりますし、竹島が占拠されてから26年です。いま韓国の武力行使によって明らかに侵略されている、こういう竹島の状態について総理は一体どうお考えなのでしょうか。

[228]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
まことに遺憾な事態であると、このように存ずるわけですが、何といたしましても、わが国の固有の領土であるというたてまえは貫き通さなけりゃならぬ問題である、それに精を出さなけりゃならぬ、そのように考えております。

[229]
日本共産党 安武洋子
総理はいま、竹島が韓国によって侵略をされているという事実をお認めでございました。

では、この竹島の領土回復については総理はどのようになさいますでしょうか。

[230]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
これは私どもの立場としますと、日韓基本協定の際両国の間に合意があるわけなんです。つまり日韓両国の間の紛争案件、これは外交ルートによって話し合いを行う、もしそれで片づかなければ調停に依頼をする、こういうことでありますが、その線にのっとって、この外交交渉、これを積極的にやってみたいと、そのように考えております。

[231]
日本共産党 安武洋子
一国の総理が、わが国の領土を侵略されながら外交ルートだ、ルートだとおっしゃいますけれども、相手が外交ルートに乗ってこないというのは、午前中の討議の中でもはっきりしているわけなんです。一つのテーブルに相手が着こうとしないのに、総理は思いを新たにして外交ルートだと、こうおっしゃる。

では、私は伺いますけれども、思いを新たにされるという、その中身は何なんでしょうか、具体的におっしゃっていただきます。

[232]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
まあ一番急がなけりゃならぬ問題は安全操業の問題である、漁業の方の安全操業の問題である、それから領土権のわが国の主張を貫き通すということである、この2つを踏んまえまして韓国政府と外交上の折衝を行う、こういうことが私の考えておるこれからのとる手段の内容でございます。

[233]
日本共産党 安武洋子
園田外務大臣は、経済協力の打ち切りも含めて考える、こういう御答弁を国会でなさっていらっしゃいます。総理の思いも新たの中身にはこのことも含まれておりましょうか、そのことを確認いたします。

[234]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
これは、園田外務大臣も外交――日韓経済関係を断ち切るとか、そんな私は物騒なことを言ってるんじゃないと思います。非常に積極的にこの問題を処理したいと、こういう意図を表明しておるんじゃないかと、こういうふうに考えますが、とにかく日韓関係全体は、先ほど申し上げましたように非常にわが国にとって大事な関係なんです。韓国に至ってもまた大事な関係だろうと思うんです。その関係が亀裂を生ずるというようなことになりゃこれは元も子もありませんよ。そういう日韓関係の重大なこと、これを頭に置きながら、この日韓関係全体の関係をどういうふうに安定させるかという中においてこの問題を処理すると、こういう趣旨のことを外務大臣はおっしゃったんだろうと、こういうふうに思いますが、そういう趣旨でありますれば私もそのとおりだと、このように考えます。

[235]
日本共産党 安武洋子
総理、違います。私はここに議事録を持ってきておりますけれども、園田外務大臣は、「たとえて言えば経済協力は中止するとか、あるいはこれが議題にならないような日韓定期会議、こういったものは開かないとか、このような形をとってでも強力にそういう日本側の姿勢というものを示すべきではないか、」こういう問いに対して、「いま御発言なさいましたようなことも含めて検討しなければならぬと考えております。」と、明確に御答弁でございます。総理と外務大臣の姿勢が違っては困りますので、もう一度御答弁いただきます。

[236]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
園田外務大臣も、日韓関係全体を踏まえて、まあひとつこの問題をその中において処理したいと、こういうことを言ってるんだろうと私は思います。いまお読みになられたことなんかもそういう意味だろうと、こういうふうに思いますが、少しも両者の間において違いはないと、こういうふうに存じます。

[237]
日本共産党 安武洋子
総理、一国の首相として、自分の領土が侵略されている、それを回復するということは何よりも一番第一義的になさらないといけないことではないんですか。その点はいかがなんですか。

[238]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
それはもうそのとおりです。でありまするから私は、これはもう、北方領土につきましてもまあ強力な姿勢をとってその解決のために努力をしておる、また竹島に対しましても先ほどから申し上げてるとおり、思いを新たにしてやろうと、こういうふうに言っておるんです。これはもう、領土問題というのはね、非常に重大なことです。

しかし、だからといって、領土問題というのは相手にとっても重大な問題なんです、これは。そう簡単に右から左というようなわけにはいかぬ、このように思いますけれども、ともかく、わが国といたしましては、竹島につきましてはわが国の固有の領土であるという立場に立ちまして、鋭意努力をしてまいると、こういう所存でございます。

[239]
日本共産党 安武洋子
いま総理は混線したことをおっしゃる。竹島は日韓条約が結ばれたときに自民党政府は放棄なさったんですか。あの千島については自民党政府がサンフランシスコ条約で放棄をなさっていらっしゃる。全然違う時点の問題をお出しです。

それで私はお伺いいたしますけれども、政府は交換公文に立ち返って紛争を解決すると、こういうことを再三繰り返していらっしゃいますけれども、韓国は竹島について交換公文に基づいて処理をしようとしているのかどうかということを明快にお答え願います。

[240]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
まあわが国も熱意を持って韓国と話し合うということになりますれば、韓国だって日韓関係というのはこれはもう大変大事な関係であると思うんです。わが国が日韓関係を重視する、同様に韓国においてもこれを重視するという立場にあると思うんです。ですから、必ずまあ妥当な理解を示すと、こういうふうに思います。私はそう期待しながら強力にこの交渉を進めてみたい、そのように考えます。

[241]
日本共産党 安武洋子
韓国は何も日本に領土を侵略されていないんですよ。領土を侵略されているのは日本なんです。ここで毅然とした姿勢をとらなければならないのは日本政府なんです。

ですから、韓国の方は、自分の方は紛争と認めていない、あそこは自分の固有の領土だと、こう主張している。ですから、交換公文に立ち返るといっても、相手が紛争と認めていないものは、交換公文に立ち返るといっても、相手が認めないものをどうしてテーブルに着けることができるんですか。26年間やって、いままで解決していないじゃありませんか。総理のおっしゃるのは、26年前におっしゃっていることと一緒なんです。ここに私は持ってきておりますけれども、いままで竹島の問題については、こういう日韓条約が結ばれるときに当時の椎名外相だって30数回いろいろやってみたけれども何ら反応がないと、こう答えていらっしゃる。それから相手がテーブルに着いてこないことについては時期が実らないというふうなことで、41年の7月にすでにお答えになっていらっしゃる。いままで何度おやりになっても、こういう交換公文に立ち返ってではこの問題は解決できないわけです。

領土を侵略されて、こういうふうなときに毅然たる姿勢を示すというのは、私はその一つは園田外相が言われているように、なぜ領土を侵略されながら片方で経済協力だ、共同開発だと、こういう姿勢をお示しになるんですか、屈辱的な。私はそういうことがわかりません。断固としてこういう経済的な協力を打ち切る、共同開発を打ち切る、それで初めて領土の回復の話し合いの前提ができるんではないですか。いかがですか。

[242]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
わが国は全世界に向かって全方位平和外交を展開しておるわけです。そのわが国が、一番近いところにある、また歴史的にもあれだけの古い関係を持っておる、今日においても政治的にもあらゆる意味におきまして深い関係のある韓国、この韓国と事を構えていいんでしょうか。私はアジアの安定のために、日韓関係が乱れるということ、これは特に私は問題がある、こういうふうに思うんです。ですから、平和的手段においてこの問題を解決したいと、こういうふうに思うわけです。

そのためには粘り強く強力にこの問題の解決の処理を韓国側に要請しなけりゃならぬ、このように考えます。私は熱意を持ってそういう話をいたしますれば、韓国だって日韓関係というものは大事な問題でありまするから、これは私は必ずや話に乗ってくるものに違いない、こういうふうに思いますが、私は安武さんのおっしゃること、これはどうも短兵急にどうこうせいという話で、何といいますかね、日韓関係は基本的にどうなっても構わぬというような、そういうようなお話のように受け取られてしようがないんですが、そうじゃないんです。やっぱり日韓関係は大事だ、これを壊してはならぬ、こういう認識、これも持たなけりゃならぬ。その上に立ってわが国の国益を守る、これが私は常識的な行き方ではあるまいか、そのように思います。

[243]
日本共産党 安武洋子
総理、事を荒立てているのは韓国ではありませんか。わが国の領土を侵略している、これだけははっきりしているわけなんです。そして、こういうわが国の領土を侵略してわが国の主権を侵している国、これを総理は友好国とお考えなんですか。

国際的にも、自分の領土を武力侵略されながらその相手国を友好国だと、こう言っている国があるんでしょうか。日本の首相として、自分の領土を武力侵略されているんですよ、そして、その相手に対して友好国だとなおおっしゃるんですか。その点をお答えいただきます。

[244]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
これは、あれだけの大戦争をしたわけでありまするから、その後始末はいろいろあります。これは一番大きな問題は、何といっても北方の四島の問題です。北方の四島、これはわが国の固有の領土である。これを不法にいま占拠されているという状態でありますが、これだってなかなかそう簡単に決着をつけ得るというような問題ではない。

同様の問題がこの竹島にも起こってきておるわけなんです。戦後のわが国の立場が非常に弱い立場であった、そういう中でいつしかこの韓国官憲の竹島支配という事態が出てきたわけであります。しかし、いまからでも遅くはない、その状態を是正する、そのために不退転の決意を持って臨むと、こう言っておるんですから、十分ひとつ御理解のほどをお願い申し上げます。

[245]
日本共産党 安武洋子
総理、念のためにお伺いいたしますけど、日韓条約のときに竹島を放棄なさいましたんですか。

[246]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
竹島は放棄いたしたことはございません。

[247]
日本共産党 安武洋子
サンフランシスコ条約で千島はどうなさったんですか。自民党政府は放棄なさっていらっしゃるじゃありませんか。

[248]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
サンフランシスコ条約におきましても北方四島は放棄いたしておりません。これは間違いなく、ひとつそういうふうに御理解を願います。

[249]
日本共産党 安武洋子
総理、いまのような御答弁、いままでの政府の歴代の御答弁と食い違いますけれども、それでもよろしゅうございますか。

[250]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
私の答弁が正しい答弁だと御理解を願います。

[251]
日本共産党 安武洋子
総理、サンフランシスコ条約で自民党政府が千島列島、これを放棄したということは歴史的な明らかな事実なんです。それと竹島を混同なさって、自分の領土を武力侵略されるということを合法化なさろうとする、私はそういう態度は許せないと思うんです。

こういうふうに私がいま韓国が武力侵略をしている、こういう相手国が友好国と言えるのかということをすりかえて御答弁なさっていらっしゃる。私はもっと、ちゃんと私の質問に答えていただきたい、竹島の集中審議をしているんですから。

私はわが国の領土を侵略しているような韓国が友好国と言えるのか、こういうことについてもう一度明確に御答弁をいただかなければ承知できないと思います。

[252]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
あれだけの戦争をした後でございまするから、いろいろ不正常な状態がいろんな国との間に残っておるんです。

その一例といたしまして、私はソビエトとの関係を申し上げたわけであります。ソビエトの北方四島、これが問題としてまだ解決にならぬ、ならぬからソビエト連邦は友好関係のない国であるかというと、そうじゃない。やっぱり千島の問題は千島の問題として解決しなきゃならぬ。しかし、この友好善隣の関係は進めていかなきゃならぬ。このように考え、御承知のようないろんな協力関係も進んでおる。

こういうことなんで、同じような状態が韓国との間にもあるわけなんです。竹島問題が解決しない、これはずうっと前からですよ。日韓基本条約が締結になった、あのときも、わが国の立場は、竹島はわが国の固有の領土であると言うんだけれどもそれがはっきりした解決にならぬ、そこで紛争案件としていま相談しようと、こういうことになってきておるわけでありますが、だからといって、日韓両国はこれは非友好国だと、そういう関係に置いていいかどうか、私どもは断じてそういうことは相ならぬと、こういうふうに考えております。

[253]
日本共産党 安武洋子
非友好の状態に置いているのは相手であるから、真の友好関係を打ち立てるためには相手の侵略をやめさせなければならない。この竹島の武力侵略をやめさせるという意思は一体お持ちなんですか、どうなんですか。

[254]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
それをやめさせたいものですから交渉すると、こういうふうに言っておるんですよ。その状態は北方四島とちっとも違わないんじゃないですか。北方四島がわが国に返ってこない、だからソビエト連邦は非友好国だ、あれとつき合いはできぬというようなことをするわけにいかぬでしょう。それはそれとして、領土問題はそれはそれとして友好の諸関係は進めていくと、こういう状態で、これは韓国との間においてでも同じことであると、こういうことを申し上げておるわけであります。

[255]
日本共産党 安武洋子
私ここで千島の問題を総理と話しするつもりはありませんけれどもね、竹島の問題を急がなくちゃならないから。しかし、ずっとすりかえ答弁をなさっていらっしゃる。自民党政府は千島列島を放棄なさったんですよ。千島列島の中にはあの国後、択捉、ああいうのは皆含まれているんです。どこの国の地図にあの四島だけは別だ、千島列島全部放棄しているということははっきりしているじゃありませんか。すりかえ答弁はやめていただきます。

それから、私はいまのこの総理の友好関係に立ち返る、領土回復をするというその中身ですね、思いを新たに、思いを新たにとおっしゃっていますけれども、総理は侵略という重大な事実をお認めになって私にいろいろ答弁をなさっていらっしゃるんです。これは国際的にも大変な問題なんですよ。武力でわが国の領土の一部を侵略されている。それを回復するということは、いますぐにでも決意を持っておやりになろうと思えばできることではありませんか。片方で武力侵略されながら、片方でどうしてにこにことして経済的な援助をしたりするんですか。どうしてそういう侵略してきている相手と共同開発なんというふうなことをなさるんですか。こういうことを打ち切って、断固とした姿勢に立ってそうして竹島から占拠を解けということが、話し合いをする、平和的に物事を解決するという最前提ではありませんか。総理はいかがお考えでしょうか。

[256]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
安武さんのおっしゃるようなことをやはり現実にやっていたら日本の国ももう大変なことになりますから、韓国を非友好国のようにしちゃう、ソビエト連邦を非友好国にしちゃうとえらいことになりますよ、これは。そんなことが本当に現実にできるものですか。

私はそうじゃない、領土問題は領土問題、これはむずかしい問題ですから、これは積極的にわが国の立場を踏まえて、どこの国とでもそうですが解決する、しかし友好関係、これは維持存続させるという姿勢をとらなけりゃ、一体日本の国はどうしたらいいんだろう、こういうようなことになっちゃうんじゃないでしょうか、まあ私はそう考えます。

[257]
日本共産党 安武洋子
現在非友好状態に韓国が持ち込んでいるんじゃありませんか。竹島でなぜ日本の漁民が漁業できないんですか。なぜあの島に日本の保安庁すら、警備艇すらあそこの近辺に近づけないんですか。おかしいとお思いになりませんか。非友好状態を相手が持ち込んできている。それに対して一国の総理として毅然とした態度がおとりになれない。それがいままでこの問題をこじらせてきた一番の大きな原因なんです。政府の韓国に対する卑屈な態度がこの問題の解決をおくらせているんです。ここで毅然とした態度を私は絶対におとりになるべきだと、そのことを主張します。



[273]
日本共産党 安武洋子
一貫して言えることは、相手は自分たちの思いどおりにならなければ単独開発だって強行するよと、こういうふうなわが国の主権的権利の侵害または協定のじゅうりん、こういうことを予告しているわけなんです。これに対しても毅然とした態度をおとりになれないというのは、わが国の領土を侵略されているという、こういう国際的にも重大な事実をお認めになりながら、経済協力の打ち切り一つ、定期閣僚会議、こういうものの無期延期一つようお出しにならない首相のその対韓の卑屈な姿勢にあるんじゃありませんか。

総理、それを改めていま直ちに経済協力の打ち切り、そして日韓大陸だな、こういう共同開発は中止する、定期閣僚会議などはこれは無期延期する、そういう態度をお出しになって、竹島の領土回復をお図りになるべきだ、こう申し上げとうございますが、いかがでございますか。

[274]
内閣総理大臣・外務大臣臨時代理 福田赳夫
そのような考え方は非常に危険な考え方だと、このように思います。先ほども申し上げたのですが、日ソにも同じ問題がある、日ソ間にも。北方四島の問題が解決しなけりゃほかのソビエトとの関係は断絶せい、こういうのと同じ議論ですよ。それはもう非常に私は危険な考え方じゃないかと、このように思います。全方位平和外交、そういう広い立場に立ちまして、日韓関係はこれはわが国の立場、権益はこれは守り抜きますよ、抜きまするけれども、これは平和裏に事を解決しなけりゃならぬ、このように考えます。

[275]
日本共産党 安武洋子
総理大臣、あなたは日本の総理大臣です。日本のわが国の固有の領土である、そういうことをはっきり明言されていらっしゃる竹島を韓国に軍事侵略されている、こういう事実もお認めになりながら、その領土回復のためにはいままで繰り返してきたそういう域を一歩もお出にならない。

いままで繰り返してこられたことでは領土回復はできないということは明らかになっている。ということは、あなたは一国の首相として自分の領土が軍事侵略されながらもそれは放置をし、そして韓国に屈従的な態度をとられる、こういう態度にほかならないわけです。

私はそういう大臣の対韓姿勢に対して抗議を申し上げて、私はまだまだこの問題について総理にお尋ねいたしたいことがたくさんございます。総理はすりかえ答弁をたくさんなさいました、その点も明確にいたしますので、きょうは時間が参りましたけれども、この問題保留にいたしまして、きょうの質問は終わります。