昭和35年03月10日 参議院 予算委員会

[521]
日本社会党(社会民主党) 永岡光治
関連して。竹島と同一のケースの事件が将来起きた場合には、それは第5条の武力侵略として武力を行使するのかということを聞いておるわけです。

[522]
防衛庁長官 赤城宗徳
竹島のような場合がほかにできた場合、その場合はその第5条による武力攻撃であるかどうかという判断の材料が必要であります。

その判断の材料は、急迫不正の侵害であって、そして一国が他国に対して、組織的な、計画的な侵害である、こういうことが武力攻撃である。

でありまするから、竹島のようなものが、同じようなものが起きたとしても、そういうものに該当するかしないかは、これはそのときの情勢によると思います。

[523]
日本社会党(社会民主党) 小林孝平
それは重大である。あなたは、竹島の事件は、あのような事件は、これは第5条の武力攻撃であるとあなたは断定されている。何回も断定されている。そうして今そういう事件が起きたら武力行使するかしないかは、そのときの情勢である、こう言っている。

重大な食い違いですよ。あなたこういうことで質問を打ち切ろうというのは、これは無理ですよ。私はきょうはあっさりやろうと思ったところが、あなたはそのものずばりで言うから、こんなことになってしまう。

[524]
無所属 千田正
関連して。防衛庁長官、ちょっと待って下さい。私が一昨日の竹島の問題の質問に対しまして、長官のお答えになったのは、確かに武力侵略である、こう断言されておったんです。

でありますから、今の問題を明快に、おとといの私に対する答弁と今日の答弁との間をはっきりしていただきたいと思います。

[525]
防衛庁長官 赤城宗徳
この間から御答弁申し上げておるのも、武力侵略である。

しかし、第5条の武力侵害であるというふうに、私はこの間言っておりません。ですから、外交的な折衝の余地もあるんだ、そうして現にそういうことをしているんだ、こう言っておるんです。

だからして第5条の武力攻撃だ、こういうふうに私は言っていない。

[526]
日本社会党(社会民主党) 小林孝平
言っておりますよ。速記録にありますよ。

[527]
日本社会党(社会民主党) 永岡光治
関連。きのうは、明らかに第5条にいう侵略だ。ただし、これは別問題として一般論に入っていくということで、一般論の問題に移ったわけです。これは条約局長は認めているわけです。

だから、これがもし竹島のような同一のケースが、全く同一のケースと言いましょう。そういうケースが将来起きたら、第5条の武力侵略になる。ただし、これはすでに発効前に、交渉によって片づけようとしているんですから、これは別問題である、こういうふうに理解してもらいたいと、こういう答弁であったわけです。それは間違いないんです。その通りだと思います。明らかにしてもらいたい。

[528]
日本社会党(社会民主党) 小林孝平
それは速記録に明らかだ。長官違う。長官の言ったことが、あなたうそかほんとうか聞いている。そんなことくらい長官は……。総理じゃない。武力を実際指揮するのは、長官なんですよ。その長官がこれは明らかに第5条の武力攻撃であるということを繰り返して言った、速記録にもあるのですから。それをあなたは――総理は助け船を出されようとしても、総理にお尋ねすることは総理にお尋ねしますから、あなたはすわっていて下さい。

[529]
防衛庁長官 赤城宗徳
いろいろ私の答弁に疑いの点があったかと思いますが、竹島と同じような状態が起きたとすれば、今度の改定の第5条の武力攻撃、こういうふうに見られます。

[530]
日本社会党(社会民主党) 小林孝平
ちゃんとまた今言われたじゃないですか。竹島と同じような事情があったら、それは第5条の武力攻撃であると今も言われた。この間も言われた。しかし、そういうものはあるけれども、これは外交交渉によって行なうのだと、おそらく今後もあれと同じことがあっても、日本は武力行使をするようなそういうばかなことはやらないと思う。これは大へんなことですよ。

それがわかりましたから、その次に移ります。そういうふうに自衛権を発動する場合としない場合があるのです。従って、この基地に攻撃が加えられたとき、日本がかりに何らの行動をとらなかったら条約違反になるかどうか、これは外務大臣にお尋ねします。そういう場合が現にあるのです。

[531]
外務大臣 藤山愛一郎
今竹島を例にとりましたけれども、竹島のようにある意図を持って、そうして組織的に武力をもって日本の領土を侵略して参りますれば、これは当然第5条の適用になるわけでございまして、それでありますから第5条の場合におきましても、当然そういう場合には日本が自衛権を発動するという、先ほど来申し上げていることを重ねて申し上げるところでございます。

[532]
日本社会党(社会民主党) 小林孝平
これは先ほどの総理の御答弁と全然これはまた違ってきました。そんなことはないですよ。そんなら竹島と同じような場合があればやるのですね、日本はこれによってアメリカと共同作戦をやるのですね。

[533]
外務大臣 藤山愛一郎
むろん、当然この条約の第5条が発動いたします。従いまして日本も自衛権を発動いたします。アメリカも集団的自衛権もしくは自衛権を発動する。ただし、それをどう行使するかということは、これは別問題です。

[534]
日本社会党(社会民主党) 小林孝平
私はこれ以上続けません。これは非常に重大な問題になりますからね。これはこの短い時間で、これは大へんです。そういう国連憲章の51条との関連その他でこれは大へんなことですから、このわずかの時間であなたとやっても仕方がありませんから、いずれ速記録を見て、安保特別委員会あるいは本委員会等で行ないます。

そういう重大な竹島と同じような事態があったら、日本は直ちに第5条の発動になるのだ、こういうことは全国民が知ったら大へんなことです。われわれはこれから安閑として寝ておるわけにいかんですよ。(笑声)いやほんとうです、大へんです。

[535]
内閣総理大臣 岸信介
いやしくも、私は一国の領土を他国がそれを、日本の領土を侵して、それを自分の領土とするという意図をもって侵略してくるというようなことは、私は日本は独立国として、当然それを武力の行使によってやられた場合におきまして武力を行使して、これを日本の領土を保有することは、国民の要望であり、またこれは当然やるべきことである、かように思っております。

ただ、竹島の事件は、これは現在の起こっている竹島の問題は、御承知のように8年前の事態でありますから、これを外交交渉に移して今日まできているから、これを今日すぐ変更して武力でもって取るということは、取り返すということはやりません。

しかしながら、将来私は日本の領土が同様な意図をもって侵略されたという場合においては、これを自衛権を発動してこれを回復することは当然である、こう思います。

[536]
無所属 辻政信
ただいまの岸総理の言明に対してちょっと関連して。竹島の問題は、明らかに韓国政府の計画的な、組織的な武力侵略である。ただしこれはこの条約の効力発生以前の問題であるから、今では条約を適用せずに外交交渉を続けてきた、将来こういう問題が起こったら第5条の適用をするとおっしゃったんですね。

そこで問題は、それじゃこの条約が発効すると同時に、すでに行なわれた既遂のその武力攻撃もしくはこの条約発効と同時に李承晩がまた兵力を増加してくる、今の兵力が600名です、それを1000名に増加したときには、断じてこの第5条を適用するということになりますね、よろしゅうございますか、それで。

[537]
内閣総理大臣 岸信介
竹島における問題は、先ほど申しましたように、すでに8年間の外交交渉の経過を経てきておりますし、今なおそういう方向によって、この問題を平和的に解決するという従来の政府の基本方針で進んでいくつもりです。その場合において、竹島におけるところの兵隊の数が何人であり、ふえるとか減るとかいう問題は、これは私は関係ないと思います。