昭和28年08月04日 衆議院 水産委員会

[005]
自由党(自由民主党) 小高熹郎
去る5月28日、島根県の沖合いにありまするところの竹島に、韓国の漁民30名が上陸いたしまして、魚介類を採取しておった。この事実を当時島根県の試験船島根丸がいち早く水産庁に報告し、政府に対してこれの措置をどうしたらいいかということをはかったはずでありまするが、1箇月ほども捨てておいた。

そのうち発砲事件あり、ごく最近におきましては、韓国が竹島に要塞を築くという情報が、ひんぴんとして地元から入って来るのであります。

はたして要塞を築くような準備を韓国がしておるか、もししておるとすれば、これに対する措置をどうしたらいいかということは、国民がただいま大きな関心事としてながめておるのであります。この点につきまして、このまま捨てておいたならば、壱岐はどうなる、対馬はどうなるという不安が続々と増して来ますので、あたかも不法入国をしておる者が、武器を持っておるからといって、こちらは武器が貧弱であるからといって、それに左右され、振りまわされて、自分の家を侵されながらどうすることもできないというような現状は、とうていわれわれは忍ぶことができないのでございまして、この竹島問題の今後の措置について、どう岡崎外務大臣はお考えなさっておるか、その点をお尋ねしたいのであります。

[006]
外務大臣 岡崎勝男
竹島問題につきましての経緯は御承知のことと思いますので省略いたしますが、こちら側でもずっとただいまのところ抗議等をいたしておるわけであります。

そこでこの措置をどうするかという点を申し上げますと、第一に私の考えでは、これは人の住まないような岩でありますけれども、これに対して常に日本の船が行って、常にその状況を見て、またできるだけ日本の漁夫等が行って、そこであわびとかわかめとか、いろいろとれるでしょうが、それを実際にとっておる必要があると考えております。ただ領有しておる、日本の領土の一部だからといって、それだけ述べて、事実上韓国の漁民が来て仕事をしておるのをほっておくということになりますと、これは主張と実際とが伴わない、こう考えております。できるだけひとつ島根県の方でも、そちらに行くことを許可をいたすと同時に、試験船でも、あるいは運輸省その他の船もありますので、こういう船ができるだけ頻繁に行きまして、実際上も日本の領土であるということを示す必要があると思っております。

今要塞を築くというようなうわさがあるというお話でありましたが、実はこういう意味で、その後も運輸省に依頼しまして、その実情を調べるようにしておったのでありますが、昨日、これは私は口頭で報告を聞いたので、文書によりませんので、あるいは多少間違っておるかもしれませんが、運輸省の試験船がさらに一昨々日でしたか、一昨日でしたか、一昨々日から一昨日にかけてでありましょう、現地に行って見たそうであります。ところが韓国側の船はもちろん一隻もいない。島に上りましたところが韓国人も一人もいなかったそうであります。それからくまなく状況を調べましたところが、何ら異状がないそうでありまして、そのまま引揚げて来て昨日報告したのを私は聞いたのであります。そのような実情のようでありますから、今の要塞云々のことは何かうわさで、間違いであろうと思いますが、今後もできるだけ頻繁に船を出しまして、実際上日本の領有であるという実を示したいと考えております。

しかしそれだけでは根本的の解決にはなりません。もちろん韓国側に十分日本の立場を理解させる必要があるのでありますが、この問題はやはり二つに考えられるのでありまして、つまり日本の領土と考えられる所に外国人が無断で入って来る。それはたとえば東京へ外国人が無断で船を乗りつけて、東京湾から入って来るというのと同じことであります。これに対しては適当な警察措置を講ずるのがあたりまえでありますけれども、なにせ竹島は人が住んでおりませんし、また人が長くそこの島の上で暮すというわけに行きません。船を持って行かなければ暮せない所でありますから、そういう船がいないときに向うがやって来るというような事態もあるのでありますが、これはできるだけ退去をせしむるようにやらなければならぬ。

しかし同時に、もし韓国側で、伝えられるようにこの島に対する領土権を主張しておるとすれば、これはいかに根拠のない、間違っておることではありましても、やはり一種の主張でありますから、これは一種の国際紛争というような形になるのでありまして、この国際紛争の 解決のためには武力を行使しないということは憲法の示すところでありますので、竹島の帰属問題に対しての解決は、平和的手段によるべきものであります。

われわれは韓国との間の今までの関係もありますから、これは十分説明すれば最後には理解すると思うのでありまして、この問題については忍耐強く主張を繰返し、説明を繰返して、日本の領有であることを認識せしむるだけの十分なる努力を、多少時日がかかりましても、やるべきものと考えております。

もっとも、どうしても最後まで解決ができないとなれば、これは何らかの国際的な手段に訴えて解決しなきゃならぬ場合も出て参りましょうが、ただいまのところは、まだ問題が発生しましてからそう長くかかったわけでもありません。こういう問題はとかく時日を要するのが今までの例でありますので、われわれもしんぼう強く、平和的手段によってこの問題を解決するという決心で、今後とも努力するつもりでおります。

[007]
委員長 田口長治郎
小高委員に申し上げますが、外務大臣は再び参議院の外務委員会から出席を要求されておりますが、ほかに簡単でございますが、2人質問者がありますので、ひとつ簡潔に願います。

[008]
自由党(自由民主党) 小高熹郎
重大問題ですから、簡略に扱われては困ります。ただいまの岡崎外相の答弁によりますと、どうもこういう問題はひまがかかるとかいうことで、きわめて手ぬるい。そんな悠長なことは許されません。今やこの問題を中心として、国民の動揺はかなりはげしくなって来ています。うっかりしたならば日本の領土を――あなたは無人島々々々とおっしゃいまするけれども、日本の領土なんでありまするから、これがこの調子でもって徐々にこうやったら、侵略者が武器を持っておるからといってこっちで手をあげてどうにもしようがない、こういう状態が徐々に壱岐に及ぶか対馬に及ぶかということはすでに論議になっており、あるいは九州までもかような手が延びやしないかというような取越し苦労が非常に大きくなっておる。これは常識では考えられない程度に、今一部のあの近海の人たちが心配しておるという、この事実を申し上げておるのであります。

去る7月28日の水産委員会において、外務省の条約局長及びアジア局長に対して、竹島問題に関する政府の措置はまことに緩漫しごくである、どうしてこういう緩漫なことをしておるのだということを尋ねたのでありまするが、そのとき外務省の首脳部であられるこれらの方々の考え方は、この問題は保安庁へわれわれの方から申しつけてあるので、保安庁で取扱っておるのだという意味の答弁があったのでありまするが、これは外務省の所轄と思っておったのが保安庁の方へ転換されたという気がいたしたのでありますが、これらに対する外務省と保安庁の話合いはどうであるか。

またかような問題に対しては、国連なりユネスコ等もございまするし、あるいは国際司法裁判所とかこれらのいろいろの機関がありますので、これらに早急にわたりをつけて、解決するように努めなければならないと思うのでありまするが、こういう点について外務省も緩慢であると同時に、海上警備隊等を指揮しておりまする保安庁の本部が、何ら強硬手段をとっておらない。

だんだん一寸二寸ずつ食われたらどうするんだ。われわれはその先を憂えてい、ただいま申しておるのでございまするから、現在及び将来に関して外務省並びに保安庁――幸いにして両代表が御出席のようでございまするから、さらにお答え願いたいのであります。

[009]
外務大臣 岡崎勝男
これは政府として一体になってやっておりますから、外務省のやるべき仕事も多々あります。保安庁がただいまやる仕事がありますかどうか、私はただいまのところは運輸省の所管事項じゃないかと思っておりますが、これは政府としてやるべきことは、保安庁にしろ、運輸省にしろ、みな努力してやるわけであります。

なおただいまも繰返して申した通り、国際的な手段に訴えるということも考えますけれども、こういう問題は、元来自国の領土の主張でありますから、あくまでも相手国に対して説得をし、これを平和的に解決すべく努力するのが当然でありまして、この十分なる努力をいたした後、どうしても解決ができないという場合に、国際的な手段に訴える、これが常道であります。

まだまた十分やるべきことがあるのであります。つまり一ぺんや二へん行ってもなかなか相手が承服しない場合は、何べんでも行って説明を加え、努力をすべきことでありまして、私はまだ国際機関に訴えるところまでは来ておらない、まだ韓国側が十分反省すべく再三繰返して努力をいたすべきだと考えておりまして、これを手ぬるいというようにお考えになるのは、私は間違いであろうと思います。これがどこでもやることでありまして、この方法が一番正しいことであろう、こう私は考えております。

[010]
自由党(自由民主党) 小高熹郎
岡崎外務大臣の答弁は、私どもとかなり違っております。韓国側においては、竹島は韓国の領土であるという考え方のもとに行動をとっておるということは、外務省当局もすでに了承しておるにもかかわらず、これは話合いで何とかなるという考え方だ。向うは韓国の領土だと思い込んで行動をとっておるから、こういう強腰に出ておるのだ。

しかるに日本は、日本の領土なりとしてこの主権を主張しておるのでありまして、さような一寸延ばしにゆっくりひまをとるのがよいとか、時間をとるのがよいなんということは言うていられぬ、安閑を許さぬ、かように私は考えているものであります。

今後さらに、あそこへ要塞をつくろうといううわさがあるくらいでありますから、どんどんあの付近へ押し寄せるかもしれません。漁民がどんどん来て仕事をするかもしれぬ。そのとき再び発砲事件が起きた際に、ただいま伺いますと、これは政府全体でやるべきであるという御答弁でありますので、そうなくてはならないと私も思っておりますが、これに対して政府は、さらに先方で強硬手段をとって上陸し、あるいは適当な設備でもしようとする場合に、海上警備隊なり保安隊なりは、これは水害等のために働くものであるか、国内の治安維持のために努力するものであるか、またこの種のものに対してもある程度の機能を発揮するものであるか、これは重大ポイントでありますので、この点明快なるお答えを願いたいのであります。

[011]
説明員(保安政務次官) 前田正男
ただいまの御質問でございますが、本日大臣は所用がありますので、私からかわってお答えいたします。

現在竹島の問題につきましては、先ほど外務大臣からも御答弁のありました通り、政府といたしましては、平和的に解決いたすべく努力しているものであります。現在のところ保安庁には関係がまだ至っておりません。現在のところ運輸省の海上保安庁の巡視艇が出ましていろいろと調査いたしております。われわれ保安庁といたしましては、国内の平和と秩序を維持するのが任務であります。

しかしながら、かくのごとく国際的な紛争になるものにつきましては、できるだけ国際的に、平和的に解決することを望んでおるのでありましてわれわれの任務の範囲で、現在のところはまだ平和的な解決を望むというのが一番妥当である、こう思っている次第であります。