昭和52年02月25日 衆議院 外務委員会

[041]
日本社会党(社会民主党) 河上民雄
余り時間がないので先に進みますけれども、竹島には自衛権が及ぶというふうにお考えですか。拡大された領海にも自衛権が及ぶと考えられますか。

[042]
政府委員(外務省条約局長) 中島敏次郎
御質問が自衛権というお話でございますが、まずお答え申し上げさせていただきたいのは、安保条約第5条におきますところの、いずれか一方の、締約国の施政の下にある領域という、安保条約第5条発動の要因たる規定におけるところの施政の下にあるという地域には竹島は含まれておらないということでございます。

[043]
日本社会党(社会民主党) 河上民雄
そうすると佐藤内閣時代に、施政のもとにない地域として、当時北方領土とまだ返還されていなかった沖縄とそして竹島が挙げられておったのですけれども、いまの御答弁は大体その御答弁を踏襲しておられると思いますが、施政のもとにないところに自衛権が及ぶのかどうか、いかがですか。

[044]
政府委員(外務省条約局長) 中島敏次郎
御承知のように竹島自体に対しましては、わが国としては、これはわが国の固有の領土であるという領有権の主張を持っておるわけでございます。ただ、しかしながら現実の問題といたしまして、竹島が韓国によって占拠せられておる、その限りでわが国の施政が及んでいないという現実が続いておりまして、これが両国間の紛争になってきておるわけでございます。そういう事態がずっと続いておるわけでございます。

したがいましてこの事態というものは、私どもといたしましては、日韓間の紛争の問題という見地からとらえて、この紛争を、日韓間にありますところの紛争解決の交換公文に従いまして、両国間の状況を見ながら粘り強く解決していこうということでございまして、現実の問題としてあそこにわが国の自衛権に対する侵害があったというような事態でとらえるべき問題ではないであろう、これは両国間の紛争の問題としてその紛争の解決に努力をする、こういうことになるであろうというふうに考えます。

[045]
日本社会党(社会民主党) 河上民雄
施政のもとにないという地域、先ほど佐藤内閣時代に3つ挙げられたのでありますけれども、その竹島を除く2つにつきましては、それぞれ日ソあるいは日米間のある種の条約的な取り決めがあって、しかしわが国としては返還を要求していると、こういうものだと思うのですね。

ところが竹島につきましては、そうしたわが国が施政権を放棄しているというような事実はないわけですね。したがって、自衛権が及ぶか及ばないかという場合に、他のようにある取り決めに基づいて施政下にないということを日本政府が認めている場合と、竹島の場合はちょっと違うのじゃないかと思うのです。

竹島の現状につきましては、これは侵略と見ているのですか。

[046]
政府委員(外務省条約局長) 中島敏次郎
法律的な根拠のないところの他国による占拠が続いておる事態というふうに考えております。

[047]
日本社会党(社会民主党) 河上民雄
昭和29年、自民党の福田篤泰議員が質問しておられるのに対して、当時の増原防衛庁次長が答弁しておられますけれども、不法入国という形と見るのが適当ではないかと答えておるのです。

いまの条約局長の御答弁は、その不法入国という表現と大体合っているものでございますか。それを踏襲されるというふうに考えてよろしいのですか。

[048]
政府委員(外務省条約局長) 中島敏次郎
まことに申しわけございませんが、当時の不法入国とお答えになられた趣旨を私ただいま的確につかんでおりませんので、そのことについてどう理解すべきか、私よく存じないのでございますが、いずれにしろわが国の立場から見れば、竹島においては韓国によるところの法律上の根拠のないところの占拠が続いておる、その占拠を担っておるところの要員がいる、その事態を何と表現するかということであろうかと思われますが、それを恐らく当時、不法入国という、入管令その他のわが国内法令上の表現、概念をもって御説明になったことではなかろうか。

そういう意味においては、法律的根拠なきところの占拠という意味においては、実態的に同じであろうというふうに考えます。

[049]
日本社会党(社会民主党) 河上民雄
防衛庁の方も来ておられますけれども、竹島並びに拡大された領海に自衛権があるというふうにお考えですか。今度の予算の中に領海拡大に伴っていろいろ防衛費を要求しておられるようですけれども、その中にその部分が入っておるのかどうか、どういうふうにお考えでいらっしゃいますか。

[050]
政府委員(防衛庁防衛局長) 伊藤圭一
いま先生がおっしゃいました領海が12海里になった、そのために自衛隊がそれに必要な装備を要求しているというお話でございましたが、これは実は、領海を維持するという責任は海上保安庁が持っているわけでございます。防衛庁といたしましては、海上におきます有事の際の行動というのは、領海だけではなく自衛に必要な範囲の公海においても行動することになっておりますので、そのための防衛力というものを整備してきておりますので、今回の3海里、12海里というものに直接結びつくような形の装備というものはないわけでございます。

それから自衛の措置といいますか、自衛権を行使するに当たっては、先生も御承知のように3つの原則がございまして、急迫不正の侵害があったとき、それから他に手段がない場合、そしてまた必要な最小の範囲でやるということでございますが、竹島につきましては、いま外務省の方からも御説明がありましたように、外交経路を通じてこの問題の平和的解決に努力なさっておられますし、現実に竹島が施政のもとにございませんので、自衛隊としては特に措置していないというのが現状でございます。

[051]
日本社会党(社会民主党) 河上民雄
そういたしますと、自衛隊法76条による防衛出動の対象とは考えていないというふうに理解いたしますが……。

[052]
政府委員(防衛庁防衛局長) 伊藤圭一
さようでございます。

[053]
日本社会党(社会民主党) 河上民雄
最後にもう一度、外務大臣、この自衛権というものは竹島とその領海にはあるのかどうか。それを最後に伺って、実はもう一問だけ、またお願いをしたいと思うのです。

[054]
外務大臣 鳩山威一郎
わが国が主権というものを主張しておるわけでございます。主権というものは、あらゆる国の権限を主張している、こういうふうに当然理解さるべきものと私は考えるわけでございます。しかし、この主権の主張を韓国もしておるわけでございまして、それ自体が紛争中、こういう状態であると私は認識しております。

したがいまして、個々の権限がどうのこうのということになりますと――これは主権というものは包括的なものであるというふうに理解すべきが正当であろうと思うわけでございます。

[055]
日本社会党(社会民主党) 河上民雄
まだ自衛権について明確なあれが――自衛権という言葉がまだ竹島の問題について明確になっていないのでありますが、いまの御答弁の中で主権と主権の主張のぶつかり合いというようなお考えを示されたのでありますけれども、国際司法裁判所などに提訴するというような道もあるはずですけれども、これはいまお考えではない。お考えにならぬのですか。

[056]
外務大臣 鳩山威一郎
国際司法裁判所によりまして明快な結論が出るということは、これは最も望ましいことであろうと思うわけでありますけれども、司法裁判所にはどうしても先方が応訴をしなければ、これは裁判にならないわけでありますので、しかも韓国はこの応訴の意思は全くないということが察知されますので、いま直ちにそのようなことは考えておらないわけでございます。