昭和35年03月08日 参議院 予算委員会

[301]
無所属 千田正
辻委員の御質問にお答え願うと同時に、私も質問しますが、これはアメリカが小笠原であるとか、あるいは沖縄とか日本の領土を使っておるのと違うわけであります。何ら朝鮮に対しては竹島を日本が放棄したという覚えもなければ、また、日本がその施政権を許した覚えもないはずであります。その点についてはっきりして下さい。

[302]
外務大臣 藤山愛一郎
お説の通り、日本は竹島の施政権を放棄したこともございません。また、向こうに譲渡したこともないわけであります。現に日本の施政下の領域であることは当然であります。

[303]
無所属 千田正
しからばその施政下の領土は、経済的にしろ、あるいは武力にしろ侵された場合は、これは侵略と見て差しつかえないと思いますが、これは朝鮮の侵略じゃないですか。

[304]
外務大臣 藤山愛一郎
むろん侵されましたこと自体は、そういうふうに解釈していいかと思います。

[305]
無所属 千田正
私は防衛庁長官に伺いますが、防衛という、自衛という言葉は、少なくとも自分の領土を守るという意味においてわれわれ国民も一応納得しているはずであります。日本の領土がゆえなくして侵略され、そうしてそのままそれに対して放置するということは、あなたとしてはどう考えるのですか。当然、防衛庁長官としては防衛の任につかなければならないはずだ。あなたとしては、どう考えられるのですか。

[306]
防衛庁長官 赤城宗徳
武力行使をするかしないかということは、これは、慎重に考えなければならない問題と思います。領土が侵されていることについて、私どももまことに遺憾であることはお説の通りでございます。

[307]
無所属 千田正
どうもまことに遺憾であるというだけでは、おそらく国民に対する答えにならないんじゃないか。少なくとも、今度は極東の安全と国民の平和のために、日米安全保障条約というものは改定される。

この際において、なぜ竹島という問題を、あなた方は日米問題に対して当然日本が主張すべきこの安全保障の立場に立って、共同防衛なり、あるいは何らかの方途をとらなくちゃならない、何らその点には触れていないということはおかしいと思う。

[308]
防衛庁長官 赤城宗徳
これは、そう、何といいますか、占拠されたからすぐに武力行使をする、それで国際的な紛争を拡大するかしないかという問題とも関連があります。

ことに、竹島は終戦直後占拠されてきているので、ずうっとその後において外交的な抗議を申し込んだり、あるいは折衝をしているものであります。これに対して直ちに自衛隊が武力行使をして、そうして国際紛争等を起こすか起こさないかということについての見通しもしないで、そういうふうに簡単にお説の通り動かすわけには参りません。

[309]
無所属 千田正
どうもこの問題に関しては日本の国民は、少なくとも朝鮮側が一方的に李承晩ラインというような悪いラインを引いて、そのラインの内部は自分の領土であるというような無謀な主張をしておる。そういうような無謀な主張に対して、日本こそ正義の立場に立って、世界平和のために、あるいは極東の平和のために日本が立たなくてはならないという立場に立っての日米安全保障条約であるならば、真に極東の平和のためにこれは打開する問題でなければならない。そのためにあらゆる努力をすべきである。国民はそういう期待をかけておるのです。それに対して今のようなお言葉では、まことに私は残念だと思う。総理大臣、いかがですか、そういう問題に対して。

[310]
内閣総理大臣 岸信介
この問題につきましては、先ほど来お答え申し上げておる通り、日本の領土が他国によって不法に占拠された、侵略されたという事態は、これは当然日本として、独立国としてその事態をなくするように努力すべきことであることは、これは当然であります。

その場合に直ちに武力を用いて、実力行使によってこの問題を解決するか、外交手段によって解決すべきかということにつきましては、これは私は侵略があったらもちろん武力行使ができる日本の自衛権の性質から申しましても、あるいは安保条約からいってもありますけれども、どういう小さいことが行なわれても、直ちに全体の武力を動かしてどうするというふうにやるかどうかという問題は、各種の侵略の行なわれた事態、またその事情等に応じまして、あるいは外交手段によって交渉に入り、あるいは外交手段だけでいかなければ、裁判の方法によるとか、あるいは国連を使ってやるとかいろんな方法があると思います。

直ちに、一方から侵略があったら直ちに実力を行使しなければならないような事態もあると思います。これらのことはその侵略の態様なり、前後の事情というものを十分考えて、最も有効にして適切な方法をとるということであろうと思います。

ただ問題は、この日韓の間の交渉というものが、御承知のように多年にわたって行なわれておりますけれども、その結論を得ることができない状況でありますために、今、千田委員のお話のように国民的にいって、韓国の態度に対して、非常な国民感情からいろいろな議論が出てくるということも、私は独立国として当然であると思います。

しかし、何とかして、会談中でございますから、この会談を終結に持っていって、そうして諸種の懸案問題を解決したい。この竹島の問題につきましても、そういうような扱いをして参っておりますから、私どもは、決してこれを看過しているというような考えでは毛頭ないのであります。

ただ、そういう事実があるから、直ちに自衛隊が出動するとか、あるいは米軍を出動せしめるというようなことでこれを解決することは、この問題については適当な処置ではない、こう政府は考えておるわけであります。