昭和29年04月16日 衆議院 内閣・外務委員会連合審査会

[101]
日本社会党(社会民主党) 細迫兼光
そのほかに、明確に言えば、侵略された場合に相手国の将兵を殺傷する権利、これも交戦権に含まっておるということ、これは議論の余地のないところであります。

この外国兵を殺傷するということを否認したままこの自衛権の発動ということがあり得るかという問題でありますが、それはあり得るということを従来にも漏らされておったことがありますから、おそらく同様な御答弁であろうと思いまするが、進んで、たとえば竹島において韓国の侵略が継続せられるというような場合に、こちらも継続してこれを排除するということになりますと、相当継続した戦闘状態がここに起ります。

最近の事実としましては、宣戦の布告せられた戦争はむしろ少いのでありまして、アメリカにおいても、かつて10(とお)ばかり戦争をやっておりますが、宣戦布告なき戦争がその中に5つあると申します。国際法学者に聞きましても、さように申しております。

宣戦布告なき戦争、戦争と名づけられない戦争が最近多くなったと承っておるのであります。いかに自衛権は万能だと言っても、認められない交戦権もその範囲では振りまわすことができるんだという御議論にいたしましても、継続的にそこに攻防作戦、大砲の撃ち合いということが行われるという客観的に見て戦争状態が起りますれば、宣戦布告なくしてもこれは戦争である。その段階に至りますれば、もはや自衛権の発動云云という段階を通り越しまして、戦争状態と相なり、従ってそこに交戦権なくんば、大砲を撃って敵艦を撃沈し、あるいは敵の将兵を殺傷することはできないと思うのであります。

そのけじめを一体どこでつけられるか。これからはやれないのだ、これまでは自衛権の発動として、たとい憲法で交戦権が否認せられておろうとどうであろうとやってかまわないのだという限界、境界線は一体どこに設けられるか、自衛隊の将来の行動において不安なものを多く含んでおると思いますから、お尋ねいたしたいと思います。

[102]
保安庁長官 木村篤太郎
自衛権の限界は、先ほど申しましたように、つまり急迫、不正の侵害を排除すればいいのでございます。それより進んでは相ならぬ、そこに限界を求むべきものであろう。

私がこの際特に申し上げたいのは、細迫君の御議論によりますると、かりに対馬の一角あるいは九州の一角にどこかの某国が、これはおれの国のものだといって、不正の侵害をして来たときに、日本は何も手を出すことはできぬような結論になるのではないか。

それであってはいかぬ。さような不正の侵害に対しては、われわれはこれを排除するだけの力を持ち、また排除しなければならぬ。しかしそれを排除すれば、それより進んではいかぬ。急迫、不正の侵害を排除すれば、それでとどめておく。そこに自衛権の限界がある、こうわれわれは考えております。

[103]
日本社会党(社会民主党) 細迫兼光
攻撃は最良の防禦だということは、昔からの戦争の原則だそうでございまして、それではおっしゃるような範囲の自衛権の発動ではとても自衛そのものを達し得ないということになって、そこに大きな危険性を生むと思ってて、そういうところまで申し上げたのでありまして、これは木村長官の一時の議論上のごまかしにすぎないと私はあくまでも思うわけであります。