昭和28年07月18日 衆議院 外務委員会

[094]
無所属 大橋忠一
次いで私は竹島問題について一言したいと思います。政府においては交渉あるいは第三国の調停によって、平和裡にこれを解決しようとお考えのようでありますが、これは非常なけっこうなことであります。

しかしながら大邦丸の事件の際にも、私は、ただ単に口先や手続だけで解決しようと思っても、相手が相手だからとうていだめであると申しておきましたが、竹島問題のごときはなおさら私は見込みがないと思う。見込みがなくて、このままうやむやに彼らが竹島を自分の支配下に入れて成功したという感じを与えますと、彼らの態度から考えまして、そのうちに対馬もよこせというようなことを言い出すのじゃないか。さらに壱岐までよこせというようなことを言い出すのじゃないか。

私は外交上のことを説明するつもりはありませんが、満州事変が起ったのも、日本の外交があまりに弱かったがために、向うをつけ上らして、ああいうことを起す原因をつくった。太平洋戦争も、実は日本の外交が非常に弱かったがために、こういうようなことになったのでありまして、おとなしい外交は平和的であるという印象は、実はその逆でありまして、初めのうちによほどしっかりしたところを見せておかないと、向うがつけ上ることによって、日韓関係というものは収拾すべからざるがんになりはせぬかと私は思うのであります。

われわれも日韓関係は最も重大であるから、何とかしてこれを円満にしなければならぬという考えにおいては、外相と全然同様でありますけれども、この竹島問題という小さな問題については、私はただ単に口先や手続だけでいつまでもひっぱっておるということはだめである。

そこで木村保安庁長官も御出席でありますから申しますが、私はやはり警備船等を御派遣になって、そうして韓国側の侵略を防がれて、少しお金はかかっても、これは長くいつまでも続く問題であろうと思いますので、実力によって向うを一方においてあきらめさせるという手段を御併用にならぬと、結局私は韓国側がまたのさばって来るということは確実であろうと思いますが、この点についての外相の方針、保安庁長官のお答えをお願いします。

[095]
外務大臣 岡崎勝男
お話の点は、実はごもっともな点が多分にあるのでありまして、われわれもじれったいような気がいたしておるのでありますが、しかし国際紛争解決の具としては武力は使わないという憲法の大方針もありますし、また今度の問題は、とにかく明々白々なる根拠のあるものでありますから、今までの大邦丸などと違いまして、これは私は解決できる問題であると信じております。この意味では今後ともできるだけ努力をいたすつもりでおります。

[096]
委員長 上塚司
大橋君時間が参りました。

[097]
無所属 大橋忠一
これは国際紛争にはあらずして、日本の領土を防衛する問題であります。従って私は日本の憲法に何とあっても、安保条約にある通りに、日本は基本的の自衛権を持っておる。それが警察力であろうと、保安隊であろうと、軍隊であろうと、敵が侵して来た場合には、これは防がなければならない。また防ぐ権利があるのであります。

私は堂々と警備隊をもってこれを防がれて、そうして向うをあきらめさせるところまでしんぼう強くがんばられぬと、必ずこれは口先だけや手続でいろいろやっているうちに向うがとってしまう。そしてまたのさばって、その次には対馬、壱岐に来るというようなところまで、私は向うの性格を考えて、来ると思います。

そうすると日韓関係というものは収拾すべからざるものになると同時に、日本の国内においても非常に不健全なところの国家主義、軍国主義というものが起って来ると思います。民主主義を脅かすようになることを私はおそれるのでありまして、その点は政府においてもう少し特に御研究になって、そうして将来万全を期せられんことを希望して、質問を終ります。