昭和29年03月15日 衆議院 外務委員会

[247]
自由党(自由民主党) 佐々木盛雄
先ほど中山さんからもお話がありましたが、たとえば竹島の問題でございます。後ほど私も竹島の問題について承りたいと思いますが、韓国側は御承知のように李承晩ラインというものを一方的に宣言いたしまして、その中へは、公海であるけれども日本の漁船が入ることを認めない、入ったら片っぱしから撃沈するというような乱暴な宣言をいたしております。その犠牲になったところの日本の漁船がすでに数100ぱいあって、異国の監獄の中に今日本の漁民が非常な呻吟をいたしているという状態であります。

そこでたとえば朝鮮の沖合い、これは3海里の領海ではない、その沖合いで日本の漁船が漁掛している。これを日本は公海だと認めている。そこで不法な撃沈を受ける、あるいは殺人をされる、こういう場合においては、日本の国民を擁護するために、生命財産擁護のために出かけて行って、かりに向うが不法に発砲して来るならば、こちらもこれに応戦するということは、自衛権の範疇において可能なことであると考えますが、いかがでありますか。

[248]
政府委員(法制局参事官(第一部長)) 高辻正己
ただいまお話がありましたように、ある種の事項について両当事国の間において意見の食い違いがある、その食い違いを武力でもって解決するということがもしありとすれば、これは国際紛争を解決するために武力を行使するということになると思います。

しかしながら私が申し上げたいのは、そのある公海上か、あるいは日本が領域内と思っているところに日本の漁民が漁船に乗って出て行った、その場合にその漁民に対して何か侵害を加えた、その場合には当然その漁民に加えられた侵害に対してそれを防衛するというのは、普通にいわゆる正当防衛として許されると考えます。

[249]
自由党(自由民主党) 佐々木盛雄
私は自衛権というものの中にはいろいろ説もあると思いますけれども、たとえば臣民公権というようなものも認められておる。従って日本の国民が不当に生命財産を侵されて、非常な緊急の事態に立至っているときに、自衛権の発動は私は可能だという考え方を持っているのです。さらにもう少し申し上げますが、先ほど中山さんがおっしゃった竹島の問題に例を一つとって申しましょう。

竹島に対して韓国側は自国の領土権を主張いたしておる。日本は申すまでもなく昔から日本の領土であることを主張いたしておる。この竹島問題というものは、言葉をかえるならば、竹島の領土権をめぐって日韓両国間に起った明らかな国際紛争である。国際紛争であるがゆえに、この紛争解決を国際司法裁判所にまで提訴するという段階にまで来ている。これはだれが考えても明らかな国際紛争です。

同時にこの国際紛争は、たとえば竹島付近におりますところの日本の漁船が砲撃をされ、撃沈され、拿捕されるということになりますと、これは明らかに日本の領土が侵害されたことになる。一国にとって領土の侵害から守るということほど大きな自衛権はなかろうと思う。そうするとこれは国際紛争であり、同時に明らかに領土に対する侵害、つまり自衛権を発動し得る段階だと私は思う。

この国際紛争というものと自衛権というものが一緒になるときが非常にある。一体そのときにでもなおかつ、これは国際紛争であるから武力行使はいけないというお考えなのでありますか。

[250]
政府委員(法制局参事官(第一部長)) 高辻正己
根本の問題は国際紛争と自衛権の発動との関連になると思うのでありますが、これは再三申し上げるのは恐縮でございますが、一応私自身の頭を整理するために申し上げますと、国際紛争を解決するというのは、まさにお話がありましたように、両国家間で主張の相違がある、その主張の相違を平和的に処理するべきであるにもかかわらず、武力でもって解決して行くということが、国際紛争を解決するために戦争をしたり武力を行使したりということになろうと思います。

ところがそうではなくて、そういうこととは離れまして、理由は何にせよ、先方から一種の打撃を与えられたという場合に、その打撃を排除するというための措置を講ずること、これは国際紛争を解決するというよりも、侵害を排除するということ自体でありまして、これは場合により正当防衛になり、場合によれば、個人に加えられた侵害を排除する場合には、むしろ一国としていうよりも、その場合にその人に与えられた侵害の排除のための正当防衛の行為になるというふうに考えるわけであります。



[253]
自由党(自由民主党) 佐々木盛雄
今竹島の話が出ましたが、現にこの間も2、3回竹島に韓国人が不法上陸をしておる。明らかにこれは領土権に対する侵害だと思いますが、そういうように領土が他国によつて侵略を受けた場合には自衛隊を出動せしめる、かようなことは自衛権の範囲内において当然のことであると私は思うのでありますが、もう一回私は確認しておきます。

[254]
政府委員(法制局長官) 佐藤達夫
竹島の事態ということを、私ははっきり事実を確認しておりませんから、それにかかわらずに一般に申し上げますと、日本の領土と明らかにわかっておるところに攻め込んで来るということは、これは当然侵略でございますから、それを迎え撃つということは、自衛権の当然の発動である、これははっきり申し上げられると思います。

[255]
自由党(自由民主党) 佐々木盛雄
わかりました。それでかりに竹島が侵略されるという場合におきましては、自衛権を発動されることが合憲の範囲で可能である、こういう答弁である。私はもとよりだと思う。それでなかったら何のために自衛隊をつくったかわからない。当然のことである。